【動画】ガザ南部などに避難していた住民の北部への帰還が始まった=ムハンマド・マンスール通信員撮影

 イスラエルとイスラム組織ハマスの間の停戦が維持される中、パレスチナ自治区ガザの市民たちが避難先から故郷に帰り始めている。そこで何を見て、何を感じたのか。朝日新聞のムハンマド・マンスール通信員は、停戦を喜ぶ雰囲気は失われつつあるという。現地から報告する。

 「やっと帰れるんだ。こんなにうれしいことはない」

 1月27日朝、地中海沿いの道を北上する人たちの行列の中に家族6人でいたムニス・ユニスさん(55)は、私に話しかけた。声は少し弾み、笑みがこぼれていた。

 この日、イスラエル軍は、2023年10月のガザ戦闘開始以降の攻撃で南部に避難していた市民たちの北部への帰還を認めた。多くの市民たちが荷物を手に帰り始めた。ユニスさんもその一人。ハマスの発表によると、初日だけで30万人以上が北部に戻った。

 「家に帰れる」。私たちが望んでいた「よいニュース」だ。だが、私はユニスさんの話を少し複雑な気持ちを抱えて聞いていた。彼が、この1週間に私に起きたことを体験することになるだろうと思ったからだ。

■喜びを胸に「故郷」に戻って…

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